動物園の裏側へ!
植物公園並みの涼しい木陰の中で動物とふれあえる広島市安佐動物公園。ここ数年、広島市の予算がつかない中でも、調査研究結果を出版物や体験プログラムといった様々な形で市民に還元しています。今回は普段立ち入ることの出来ないバックヤードを見学させてもらいました。
<非公開エリアの見学ツアーに出発!!> ▼「オオサンショウウオの保護増殖施設」 日本初の繁殖に成功した1979年以降、世界トップクラスの飼育技術で知られる施設。今回は特別に、飼育担当の田口さんにこの極秘施設を案内していただきました。施設内には多くの水槽が並び、長寿日本一のイガグリ(31歳♀現役で産卵中)を始め、大小さまざまな個体を間近に見ることができます。プルプルとした姿、ちんまりとした指先、カパっと開く口元…、田口さんが嬉々として語るポイントを観察していると、確かに愛おしくなってきたかも?! オオサンショウウオは変温動物で体温調整にエネルギーを使いません。だから、食事は3日に1度。しかも夜行性で昼間は動かないので、「省エネ型で出不精なんですよ」と田口さん。そんな彼らをたくましいなぁと感じたのが「繁殖期」の話でした。普段、巣穴の中には“ヌシ”と呼ばれるオスがいて、他のオスと縄張り争いをしているのですが、繁殖期に限ってはメスだけでなく他のオスをも迎え入れてしまうというフリーな繁殖スタイル。しかし、産卵後はメスを含めた全員を追い出し、〝ヌシ″が男手一つで卵を孵化させて子どもたちを守るのだそうです。いささか自分勝手な気もしますが、すべては子孫繁栄のため。数千万年前から生きながらえてきた強さを感じました。 ▼「キリン舎の見学&餌やり体験」 「野生のキリンは立ったまま眠ります。では、動物園のキリンは?」 「答えは…お姉さん座り」と、全身でキリンの真似をする飼育担当の南方さん。その姿と語り口にどっと笑いが起きながら見学は始まりました。まずは、キリンたちが過ごす部屋の中へ。縦に5m以上ある細長い入口、高い天井。部屋の四隅には、リンゴや干し草などの食事が設置されています。キリンは少食なので、栄養価の高い食事を効率的に与える必要があるのだとか。ミネラルやカルシウムの多い牡蠣殻を粉状にして振りかけるなど、キリンのストレスにならないよう工夫をするそうです。 そして、お待ちかねの餌やり体験。キリンの方から餌はまだかと集まってきました!キリコ母さんと、娘のメグミ、最近婿入りしたアキヨシです。餌やりについてレクチャーを受けた後、いざ実践。彼らは30cm以上ある長い舌を使って、枝についた葉を器用にしごいて食べます。キリンの顔はすぐ目の前!目の潤いや息遣いに気づいたり、長い鼻筋に触れたり、背の高さに改めて驚いたり。人懐こく近づいてくるので学生も興奮状態で、餌を与えたり写真を撮ったりして存分に楽しみました。 ▼「動物病院の見学&吹き矢体験」 獣医師である野之上さん&渡邉さんが迎えてくれました。動物病院の仕事は園内動物の健康管理がメイン。診察や治療はさぞかし大変だろうと思いきや、意外にも手こずるポイントはもっと前段階にあるといいます。それは“捕まえる”こと。全国2位の敷地面積をもつ同園は本来の生息地同様に運動できる範囲が広く、“全速力で逃げる”という野生本能が目覚めるのでしょう。そこで登場するアイテムが麻酔を打つために使う「吹き矢」です。渡邉さんの見事な吹き矢さばきを参考に、皆で挑戦!練習用の模型に狙いを定めて飛ばすのですが、これがなかなか難しい。慣れているスタッフでも動物の種類や筋肉のつき方によって苦戦することがあるそうです。 帰り際には、動物の骨格標本も見せていただきました。これらは貴重な資料として、教育団体等に無料貸出を行っているそうです。動物たちは死を迎えた後も、動物愛護や自然保護についての学びや気づきを与える存在として活躍しているんですね。 ▼「クロサイ舎の見学&餌やり体験/飼育担当 井上さん」 次に向かったのはクロサイ夫婦の飼育舎。迎えてくれたのは飼育担当の井上さんです。クロ(夫)とハナ(妻)は開園した年にケニアから来日。現在は引退して非公開の飼育舎で過ごしていますが、ハナ45歳(長寿世界No.1)、クロ44歳(長寿世界No.2)と、まだまだ注目を集める夫婦なのです。しかも、ハナは出産記録も世界第2位(国内では1位)! 人間の妊娠期間は約280日ですが、クロサイは約450日。それを10回も繰り返したとは、なんて偉大なクロサイでしょう。とはいえ、人間でいうと90歳のご老体。体温調整や関節の痛みも配慮せねばなりません。飼育舎の中では、健康に配慮した餌の話やワラの布団作りについて話を聞きました。 そして、いよいよ最高齢夫婦にご対面。サイといえば、大きなツノが特徴ですが、これ骨じゃないんです!毛や皮膚が角質化したものだそう。確かにさっき見せてもらったクロサイの骨格標本にもツノがなかったし、まだまだ知らないことがいっぱいあるなぁと感じました。 <動物園は、未来に続く方舟> これは、たとえ動物が絶滅を迎えたとしても、もう一度、本来の生息地で未来の命を再生できるという意味で、今回の授業冒頭に語られた竹内さんの言葉です。動物園のミッションはレクリエーション、教育、調査研究…と挙げられますが、強く印象に残ったキーワードは「種の保存」。現代は“最大の絶滅期”といわれ、オオサンショウウオは河川工事や生活排水、キリンは紛争、クロサイはツノを目当てにした密猟…とそれぞれに絶滅のリスクを抱えています。自然淘汰で絶滅するのは全体のたった4分の1、ほとんどはこのような“人災”が原因です。 「動物園にできることは何か、を念頭に活動を続けています」と竹内さん。その言葉がお題目ではないことを見学中の話からも感じることが出来ました。たとえば、田口さんは河川工事などにも対応できる人工巣穴の研究や保護活動を続けています。南方さんは全国の動物園で飼育されているキリンの減少問題に対峙し、ブリーディングローンという動物の貸し借りを行って繁殖の可能性を追求しています。野々上さんと渡邉さんは「救えなかった動物が忘れられない」という気持ちをバネに病理解剖や調査研究を行い、未来につながる健康管理・病気予防をめざしています。井上さんは「クロとハナは捕獲されたとき『しまった!捕まった!』と思っただろうねえ」と笑いながら語りましたが、密猟からの保護、ストレスフリーな野生環境を再現し続ける井上さんたちの苦労がなければ、現在のクロやハナの記録はなかったでしょう。 安佐動物公園の取り組みがもっと知られるようになれば、私たち自身の意識も変わり、“できること”はもっと増えるはずです。大人になったからこそ理解できる動物園の裏側。楽しさの中に大切な学びがたくさんありました。 (ボランティアスタッフ 沖田菜津子)
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2011年07月30日(土) 10時00分 ~ 14時50分 教室:広島市安佐動物公園
広島人なら誰もが知っている『安佐動物公園』が今年で開園40周年を迎えます。 「子どもの頃に行っていたなぁ、懐かしいなぁ・・・」 そんな声は、ちらほら聞こえてきますが、 大人になってからは、なかなか行くタイミングを逃している方も多いのでは? 安佐ZOOといえば… 168種類の動物達を飼育する中、 世界最高齢のクロサイ夫婦がいたり、 クロサイ繁殖で世界記録を樹立していたり、 オオサンショウウオの繁殖研究で高い評価を受けていたり、 種の保存や自然保護に真剣に取り組んでいたりetc 学ぶべきことがとても多い『教室』です。 今回は、安佐動物公園さんのご協力により、 普段は非公開となっているエリアをまわりながら、 オトナだけで動物園を見学する授業をつくりました! そもそも、動物園ってどんな役割をもっているのか?から始まり、 子どもの頃にはあまり浮かばなかったリアルな疑問 「たくさんの動物達を飼育する、エサのコストはどれくらい?」 「動物たちのフンは、どう処理しているんだろう?」 そんなちょっとした「?」にも、6人の先生方がしっかり答えてくれます! もちろん『オトナのエサやり体験』や 動物に麻酔をかける『吹き矢体験』など、実践も盛りだくさん。 『動物園は自然からやってきた動物大使を預かり、動物を楽しみ学ぶ場所です。』 (広島市安佐動物公園の基本理念より抜粋) もう一度、大人の視点で見たり聞いたりすることで、 きっと、今まで気づかなかった沢山の「おどろき」や「なるほど」に出会えるはずです。 【授業の流れ】 09:30 受付開始 10:00 【座学】「安佐動物公園の四つの仕事」(竹内さん) 11:00 【園内バックヤード見学】 オオサンショウウオの保護増殖施設の見学(田口さん) <昼食> 13:00 【園内バックヤード見学】 キリンの飼育と現場見学(南方さん) 舎内見学、餌やり体験 13:40 【動物病院見学】 野生動物の治療と保護(野々上さん・渡邉さん) 動物病院の見学と吹き矢体験 14:10 【園内バックヤード見学】 クロサイの現状と保護(井上さん) クロサイの現状と保護活動、飼育舎の見学、餌やり体験 14:50 終了予定 ※終了後、希望者は5月に生まれたばかりのアムールトラの赤ちゃんの見学ができます。 (※バックヤードではありませんが、担当者の方が説明をしてくださいます) ※実費として540円が必要となります。 (入園料:440円 レクリエーション保険:100円) ※大学生以上の方がご参加いただけます。 ※昼食は、園内の食堂でいただきます。 できるだけお弁当をご持参ください。(食堂にて購入も可能です) ※日差しが強いと思われます。日よけ対策、水分補給などは各自ご用意ください。 【集合場所】 安佐動物公園 正門前 【持ち物】 ※実費として540円が必要となります。 (入園料:440円 レクリエーション保険:100円) ※昼食は、園内の食堂でいただきます。 できるだけお弁当をご持参ください。(食堂にて購入も可能です) 【入場】 集合場所へは、授業開始時間までに必ず集合して下さい。 なお、10分を超えて遅刻された場合は受付終了となり、授業へ参加することが出来ませんのでご注意下さい。 【交通手段】 お車、自転車でお越しの際は、パーキングをご利用下さい。 (授業コーディネーター 安彦恵里香)
<先生>
竹内輝明 / 管理課企画広報係 係長
【座学】の時間にて、「安佐動物公園の四つの仕事」をお話し頂きます。
田口勇輝 / 飼育・展示課 第1飼育係 技師
【園内バックヤード見学】の時間にて、オオサンショウウオの保護増殖施設のご案内を頂きます。
南方延宣 / 飼育・展示課 第2飼育係 技師
【園内バックヤード見学】の時間にて、キリンの飼育と現場見学、舎内見学、餌やり体験をご案内頂きます。
野々上範之 / 飼育・展示課 動物診療係 獣医師
【動物病院見学】の時間にて、野生動物の治療と保護、動物病院のご案内を頂きます。
渡邉舞菜弥 / 飼育・展示課 動物診療係 獣医師
【動物病院見学】の時間にて、野生動物の治療と保護、動物病院のご案内を頂きます。
井上孝 / 飼育・展示課 第1飼育係 課長補佐
【園内バックヤード見学】の時間にて、クロサイの現状と保護、飼育舎のご案内を頂きます。
<教室>
広島市安佐動物公園
住所:広島市安佐北区安佐町動物園 <公共交通機関> ■アストラムライン本通駅から 長楽寺または広域公園行き、 上安駅下車。バス乗り換えあさひが丘行き又は飯室行き(全所要時間約40分) ■広島駅から 1.バス利用 広島駅南口Bホーム、9番乗り場からあさひが丘行き、安佐動物公園前下車 (全所要時間約50分) 2.JR利用 ・JR可部線(広島駅始発)、大町駅下車。 ・アストラムライン大町駅から広域公園行きまたは長楽寺行き、 上安駅下車。 ・バス乗り換えあさひが丘行きまたは飯室行き、安佐動物公園前下車 (全所要時間約60分) <乗用車> ■広島市中心部から 1.国道54号線をアストラムライン沿いに進み上安駅直後の動物園入口で右折。 約40分。 2.広島高速4号線(広島西風新都線)を進み大塚駅北口交差点で右折、アストラムライン沿いに進み動物園入口(上安交差点)で左折。 ■広島北I.C.から約20分 出口を右折し飯室交差点を左折、長沢大橋、あさひが丘団地と進みます。 ■広島I.C.、五日市I.C.から約20分 アストラムライン沿いに進み上安駅そばの動物園入口(上安交差点)を山側に進みます。
全国で62番目の動物園として1971年9月1日開園。 約50ヘクタールの広大な敷地内にキリンやライオンなど約170種類の動物をできるだけ自然の生態で飼育・展示。あまり柵が設けない、無柵放養式を多く取り入れている。 クロサイの繁殖では世界記録を樹立しており、オオサンショウウオの飼育研究は学術的にも高い評価を受けている。 2001年には「ぴーちくパーク」を開設。2003年夏からは「納涼ナイト・サファリ」として夜間開園を毎夏開催中。 website:http://www.asazoo.jp/
カテゴリ:【校外学習】 言 語 : 日本語のみ 定 員 :30人
参加対象:オトナ もしくは大学生以上。